アトピー生活

アトピー性皮膚炎とのなが〜い付き合い

小学校3年生くらいだったか、うちにバブルスターが来た。
バブルスターとは、浴槽に備え付けた器械のノズルからぶくぶく泡が出るという家庭用温浴器で、神経痛や疲労回復に効くと謳われていた(ようだ)。それがアトピーにも良いとかで、看護師だった母が病院の同僚から譲ってもらってきた。
ヴーというモーターの唸りとともに泡がとめどなく出てきて、設置当初はだいぶはしゃいだ。泡はきめ細かいものではなくて、湯船がボコボコなるのもノズル回りの狭い範囲だったけれど。


ノズルを持って、顔、首から上半身、手足…と流れ出す泡をあてていく。当時は可愛らしいもので「よくなるかな?よくなるかな?」と期待を持って、目新しさが無くなっても辛抱強くあてつづけた。
まあ、お分かりの通り結局何ら効果は無かった。


いまネットで検索したら、原ヘルス(バブルスターのメーカー)について週刊新潮のWeb記事で、『原ヘルス社長が設立した会員組織が訪問販売法違反容疑で捜査』『バブルスターの浴用剤が薬事法違反』などとあった。
良くあるピラミッド型の販売方式だったらしく、色々と問題が浮上したのが1990年前後。わが家に来たのはその2~3年後になる。嗚呼あの時、ネットが発達してればね…。
効果は無くとも辛抱強く数年は続けたと思うが、そのうちちょっとした風呂のアクセントに変わって、やがて壊れた。


他にも化粧水だなんだと試したが、効果が確信できるものはなかった。効果は出ないのだけど、"実は少しずつ効いてるんじゃないか" "良くはなってないけど酷くなるのを抑えてるんじゃないか" など 一抹の期待を捨てきれなかった。
希望にすがりたい者のそういう想いを突くように、売る側は「体質を変えるのには長い時間がかかる」「せっかくここまでやってきたのが無駄になる」「やめると反動で悪化する」などと言いやがるわけである。
なかでも酷いのは、「悪いものを全部出しきるために一度悪化する。悪いものを出し切って初めて良くなる」というもの。どれだけ酷くなっても「いま毒素を出している最中なんですよ!」といけしゃあしゃあと言い逃れしてくる。現にこの言いぐさに引っ掛かって重篤化したという話は多い(こういう商法はアトピーに限らず良く耳にする)。
そもそも悪いものって何だ、という話だが、当時アトピーについて医者の間ですら分からないことが多かったようで、いわんや我々においてをや。


こうして「全て嘘であり所詮いいカモである」と悟った(ひねくれた)私だったが、それでも親、特に母としては街で呼び止められるとついつい話を聞いてしまう。私と並んで街を歩くと、薬屋やら漢方屋から良く声をかけられた。
それにとどまらず色んな店の店員や知り合いなんかから、善意こそあれ、あれが良いらしいこれが良いらしいと有象無象の情報が飛んでくる。それらに辟易しつつ、「だまされたらいかん」と撥ね付けるのが常だった。