アトピー生活

アトピー性皮膚炎とのなが〜い付き合い

薬つけ 土佐清水⑤

サンドバスから出て男女別になった処置室に入った。部屋に入ると、ちょうど私の前にサンドバスを出た人の薬つけが終わったところ。そうやって上手いこと回しているようだ。


パンツ一枚になって新聞紙 (だったかな?) の上に立ち、看護師さんが二人がかりで全身に薬を塗ってくれる。待ち合いにいた母も初めての薬つけは見学した。
顔、首、腕、体、足と上から順に全身、大豆やハトムギなどの植物を原料としているらしい半透明のVa軟膏を塗って、その上に鼻にツンとくるグリテールパスターなる軟膏を重ね塗りする。そしてガーゼを被せ、包帯でグルグル巻きに。顔にはグリテールは塗られず、包帯も巻かれなかった。手先は包帯ではなく白い綿の手袋。パンツの中にも当然薬は塗るけれど、包帯は巻かずパンツで封印。頭皮には白濁した液状の薬をシャカシャカ擦り込まれた。
顔は苦しいから最後に巻くのかな?と思っていたけど結局最後までやらずに終わって、私は顔はグリテール・包帯なしの指示だったそう。完全なミイラにならずに済んでホッとしたような、少し残念なような心持ちだった。母は、看護師さんたちの見事な手さばきで私がみるみるミイラ巻きされていく様を「おお…」と見ていて、後で「顔は免れて良かったね」と言った。


※ちなみに、Va軟膏は通常のステロイド薬の1/2~1/4のステロイドを含むVa(2)〜Va(4)と、全くステロイドを含まないVa(0)の数種類あって、症状に合わせて塗布。私は初めVa(2)からだった。色素沈着を取り除く効果があるという茶色いAOA軟膏というのもあった。グリテールパスターは赤みがかったオレンジ色で、明治時代からある軟膏らしい。
↓ 病院のHPに薬の説明がありました。
http://tosashimizu-hospital.com/smarts/index/64/
『丹羽博士の正しい「アトピー」の知識』(97)という本に詳しい説明が。もっと新しい本も出てるのかも?


薬つけを終えると看護師さんから、包帯は寝る間巻きっぱなしで、朝起きたらシャワーでグリテールを落としていいと伝えられた。シャワー後に保湿剤が必要だと言ったが、「塗らなくても大丈夫と思うよ」と軟膏は貰えなかった。正直大丈夫だとは思えず、なんとか貰えないかと思索したが諦めた。明日の夜の処置まで包帯を巻きっぱなしにしとく、という手もある。
軟膏は貰えなかったけども、看護師さんはみんな親切で親しみを持って接してくれた。当然土地の方言(土佐弁?)を喋っていたのだけれど、再現できるほどに(というかほとんど)覚えていないのが残念。語尾に"にゃー"とか "きー” とかついていた気がする。


処置室を出ようと動き出したが、本当にギシギシで関節が曲がらない。全身包帯を巻くとこんな風になるんだ!という感動すらあった。顔とパンツ部分以外グルグル巻きのため、首は曲がらないし肩は回らないし肘も膝も曲がらない。
えっちらおっちら民宿まで帰ったが、あまりにもぎこちなく歩くさまに母は笑っていた。


宿に着いてまず第一の関門が、上り框。民宿の玄関ということもあり結構な段差があった。母の手を借りつつ、曲がらない足をミキミキ曲げて登った先には階段が。これまたなかなかの段数と段差がある。手すりに掴まりながら、一段ずつコンパスのようになって登った。


ようやく部屋にたどり着いて一息。テレビを見たり、病院のことを話したりした。それにしても私から発散されるグリテールの臭いがなかなかで、母と「凄かね」と言い合った。部屋中になんとも形容しがたい鼻腔をくすぐる匂いが充満していた。
そして、寝る前になって何よりの困難が「和式トイレ」であることを知ったのだった。