アトピー生活

アトピー性皮膚炎とのなが〜い付き合い

強迫神経症的な

全身の肌が赤くむくんで、カサカサじゅくじゅく、特有の嫌な匂いを放つ。そんなんだから、何か "漠然とした不安" みたいなものに憑かれたりするのかもしれない。


アトピーの悪いものを集めて宇宙に飛ばす』というイメージに取り憑かれていた時期があった。なんのこっちゃ、という感じだけども。小4くらいだったか。

全身を撫でるように空中で掌を動かし(大丈夫大丈夫、悪いことない)と心の中で呟きながら、全身の悪いものを集める。そして手をピストルの形にして空に撃つ。人に見られたら完全におかしな子だと思われるのは分かっていたから、家や学校、道すがら人が見ていない隙にやる。フッと急に不安が湧いて来るとどうしようもなくて、撫でる、撃つを何度も繰り返した。授業中でも発作が起きるたびこっそり小さくやっていたが一度先生に見られた。先生は怪訝な顔をしていたけど何も言わなかった。
たぶん、鍵閉めたって分かってるけど何度となく確認しないでおれない、火消したって確信はあるのに繰り返しコンロを見ずにおれない、て感覚に近いと思う。当然どうなるわけでもないと分かっているのに止められなかった。


小学生の頃、◯の集合体が気持ち悪くて仕方なかった。虫の卵の集まりとか、梱包材のプチプチとか。◯では無いがひまわりの中心部(種の密集)なんかも。見てしまうとウーッとなって不安の衝動が込み上げてくる。それもまた全身を撫でて撃って、という動作につながる。

この『集めてBANG』に囚われていた頃、風呂上がりすぐ、洗い場で全身に酸性水を吹き付ける療法をしていた。父親が霧吹きで全身に吹き付けていくのだけども、このとき吹き付けた水が、肌の表面に大量の小さい◯の集合体を作る!ただでさえ堪らないのに、自分の肌上に、次から次へと発生していくのだ。父の目前ではあるがもう耐えきれず、霧吹かれたところを空中で撫でるようにしては緩くピストルを作り、浄めの儀式を繰り返した。さすがに父も気づいたが、なんてことない子供の遊びと気に止めないかな、と楽観して続けた。


それがある日の霧吹き中、父が耐えかねたように語気強く「なんばしよっとや」と。「別に…」と答えるしかない。「悪いものを集めて宇宙に飛ばしてるんです」なんて言って「ああ、そうや」てなるだろうか。険しい眼差しで「やめろ。気持ち悪かね」と言われてシュンとした。それから、とにかく霧吹き中は目を閉じて、ギギ…と歯を喰いしばって堪えた。


しばらくして、父が私の風呂場での奇行につい触れて、「猫を追っ払うためにエアガンで撃っとったけん、猫に取り憑かれたっちゃなかろうかと思った」と言う。私のアトピーに動物が良くないからと、家の回りにたむろしている野良猫をエアガン(私が友達の兄からもらったもの)で撃っていたらしい。そして私が手で空中をかく行為が、猫の動きに思えたらしいのだ。
「当てよらんちゃろ?(威嚇射撃だよね)」と聞くと、「狙っとるけど当たらん」とのこと。そんなことは止めてくれと丁重にお願いしたが、暫くパンパンやっていたようだった。 それでも私の儀式への誤解から不安を覚えたのか、そのうち撃つのを止めた。


父も「猫の呪い」なんてものが脳裏に浮かんだわけで、人それぞれ、他人からは思いもよらないような思考形式があるんだろう。と、ホッとした。とはいえ宇宙にBANGしていることは言わないでおいた。


酸性水について
アトピーの悪化にともなう化膿など黴菌の殺菌が必要な状況には効くが、カサカサの改善にはならず、長く恒常的に使用すると逆に乾燥が酷くなる…と現在のかかりつけの医師の本にありました。
個人的所感としても、膿をもったジュクジュクが涸れて感動しますが、それを越すと逆につっぱってきます。硫黄泉も同じだなと感じます。