アトピー生活

アトピー性皮膚炎とのなが〜い付き合い

二日目 土佐清水⑥

佐清水病院で初めてアトピーの処置を受けた翌朝。
夜は包帯キチキチで初め寝苦しかったが、結局ぐっすり寝た。ムズムズ痒みが出たとき包帯のせいで掻けないのは困ったけれど。薬を浸透させるための包帯は、掻かない (掻けない)という意味でも良いのかも。 それでも夜中になんとか掻こうとしたらしく、ところどころ包帯が緩んで内側のガーゼが飛び出していた。顔は乾燥しておらず、「ちょっと良い感じかな?」と思った。


朝ごはんを食堂で食べて、病院から処方された薬を飲んだ。SOD様作用食品(エスオーディーようさようしょくひん)といって、" アトピーに悪い影響を与える活性酸素 " を分解する酵素 (SOD) と同じ働きをするらしい。これを毎食後8包ずつくらい飲んだと思うのだが、これがまさに " 粒の粗い鳥のすり餌 " みたいで、飲み下すのが大変。口の中でボソボソして、水で流し込んでも喉につっかえ、お腹にも重たい。もう一つ、ルイボスTXという赤茶色の粉末を1包ずつ飲んだ。ルイボスティーアトピーに効くということで、これはそのルイボスティーを " 特殊遠赤外線で焙煎した濃縮エキス " だそう。これはお茶の渋みが濃縮されたような味で、口に含むと舌や口内がビリビリした。


病院から 「朝シャワーでグリテール軟膏を落として」と言われていた。しかし保湿剤を貰えなかったからシャワーを浴びたあとの乾燥が不安で、「夜まで包帯でいる」と母に言ったが、夜は病院のサンドバスで洗髪もできないからと、シャワーを浴びるよう促された。一応家からワセリンを持ってきていて、「もし乾いたら塗ればいいじゃない」と母。確か当時、入院患者に対して病院から『当院で処方される薬以外を勝手に使った場合、強制退院してもらう』と言われていて、子供らしく素直だった私は「ダメって言われた!」と母に抗議。「わかりゃせん。ワセリンくらいかまわんやろ」と母が大人らしく言い切って、しぶしぶ一階の風呂へ向かった。


民宿の風呂は広々として、家庭用の1.5倍くらいはあったと思う。脱衣所で包帯を取ってガーゼを剥がし、おそるおそる肌の状態を見た。肌全体に、グリテールパスター軟膏の赤みがかったオレンジ色がついている。ボコボコの皮膚の凹凸が軟膏で埋まっている感じ。いつもだったら、夜風呂上がりに薬をつけても朝起きるとパサパサに乾いているのだが、肌は湿度を保っているようだった。

シャワーを浴びて、石鹸で体を洗いグリテールを落とす。厚めに塗られたところはなかなか取れなかったが、多少でも残っているほうが乾燥しないんじゃないかと思ってそのままにした。いつもならゴシゴシ乾燥した皮膚を擦り落とすところだが、ケバだちは見えないしパリパリしていないから、擦らずにおいた。


シャワーを上がって体を拭き、そのまま服を着る。いつもなら考えられないことだ。お湯から上がった瞬間に肌が乾燥し出すから、すぐさま全身にワセリンを塗らなきゃいけない。ところが、全然大丈夫だった。乾かない。これには本当にびっくりした。前日の夜、看護師さんに朝シャワーしたあとの保湿剤が欲しいとお願いしたが、「いらないと思うよ」とニコニコ言われ、内心「そんなわけあるか!分かってないんだ」とがっかりしていたけれど、あの人たちは正しかった。退院後はやはり朝晩薬をつけないと乾燥したから、サンドバスの効果なんだろうか??


結局、そのまま夜の処置までワセリンを塗る必要も感じず、私は一日中「不思議だ、不思議だ」と繰り返していた。これは本当に良くなるんじゃないか…? そんな想いを抱いて、いやまだ分からんぞと早すぎる期待を打ち消した。
夜の処置で昨日の看護師さんに「全然乾かなかった!」と感動を伝えたら、「そうでしょう」とニコニコ笑っていて、きっと同じようなことを言う患者さんがたくさんいたんだろう。