アトピー生活

アトピー性皮膚炎とのなが〜い付き合い

荒くれ先生

中1の時のクラスの担任は、父親くらいの年の体育教師だったのだけど、馬乗りになって生徒をぶん殴るような荒くれ先生だった。


「くらわすっぞ」(げんこつを食らわせるぞ的な意味)が口癖で、実際に体育の時間に "態度が悪い"という理由で男子生徒をグラウンドに押し倒し、馬乗りになってグーで顔や腹を何度も殴りつけるということがあった。
その時女子は保健体育か何かで教室で授業を受けていて、クラスメイトの男子が「なめとっとか、あぁ!?オラァ!!」と怒鳴られながらボコボコにされる様を窓から目撃。私含めみんなドン引きしていた。飛んできた数学教師 ( 副担任 ) に諌められてもしばらく馬乗りのまま怒声を発していて、殴られた生徒は血反吐を吐いていた(らしい)。

今だったらとんでもないことになるだろうけど、当時は今ほどにはそういうことに関して厳しくない風潮だった。「くらわすっぞ」はこの先生に限らず男性教員(主に体育教師)から良く聞かれた言葉だったし、ビンタ張り手のたぐいはしばしば目にした。さすがにグーでぶん殴るのはその時くらいしか見ていないが。
その場に居合わせた生徒曰く、止めに来た副担任は「回りの目があるから止めて下さい!」としきりに体裁を気にしていたらしく、それも酷いなと思った。
殴られた男の子は、体育が終わって教室に戻るや女子たちに「大丈夫!?」と取り囲まれて、腫らした口元を腕で拭うように隠しながら「あいつのパンチなんか大したことない」と強がっていて、今思うとかわいい。結局そのあと、「 (殴られた) 腹が痛い」と言いながらもその子は普通に1日授業を受けて、特に問題になることもなくその件は済んだ。


二学期の終わりに高知の土佐清水病院に入院した私は、見違えるようにアトピーが綺麗になって三学期を迎えた。学校に行ったら、「冬休み前に学校を一週間も休んでどこ行ってたの?」とクラスメイトの何人かに聞かれた。入院は仲の良い友達にしか伝えていなくて、どうせ担任が休んでる理由を言ってるだろうと思っていたのだが、荒くれ先生は私が休んでいる理由を何度聞かれても濁して教えなかったらしい。


小学校の時、クラスに首もとから肩口にかけて大きなアザのある女の子がいて、ある日その子が学校を休んだ。朝のホームルームで先生が神妙な顔で「○○さんは肩のアザをとても気にしていて、アザを取る手術を受けるために休みます。別に体に悪いものでも伝染るものでもないけれど、本人はとても気にしていて、そういう気持ちを理解してあげましょうね」的なことを言った。
その説明いるか?と思った。気にしているなら余計、そんなことわざわざ伝えられたく無いんじゃないだろうか。子供ってむしろ大人が感じないような微細な感情に配慮するところがあって、見えやすい場所のアザでも無かったし、たかだか二日程度の休み明けにその子の襟元から覗く肌にアザが無かったとして、それを露骨に追及しただろうか? ちなみにそのクラスにおいて、その子がアザについていじられたり、嫌なことを言われたりするような状況は無かったと思う。
もちろん、本人が後で聞かれるのを嫌がったとか、先生も「万が一にも心ない言葉があってはいけない」と思ったのかもしれない。のだけれど、子供の頃、そういう大人の "子供の事情をなんでもはっきり皆に提示してしまう行動"について、生意気にも「デリカシーないなあ」と思うことがしばしばあった。


そんなこともあって、まさか荒くれ先生が私の入院を伝えるのを控えていたとは驚いた。馬乗りぶん殴り事件以来、この担任について否定的な気持ちが強かったから尚更だ。正直、「いちいち答えるのめんどくせえな。言ってもらって良かったのに」と思った。けれど、「もしかしたらこの子はみんなに伝えられるのが嫌かもしれない」という意識を持ってくれた(んだろう)ことはとても嬉しいことだったし、"ペッタリ張り付けたような教師 " じゃない心のひだを感じて、少し透明な気持ちがした。もちろん暴力は肯定しないけれども。


ちなみに。数年後、高校に入学して同じクラスになった子に声をかけられ、「うちのお父さんから中学で担任したって聞いたよ」と言われて初めて気づいた荒くれ先生の娘さんは、おっとりとした感じの、大変柔らかくて優しい女の子だった。

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